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you all のピッツバーグ方言

外国語の中には、主語が二人称単数と複数では異なる語を使うことがあります。

英語はどちらも you で表せますが、複数の場合には、you all のように言うこともありますね。

スペイン語のクラスで二人称複数の主語の形を習っていた時に、教授がピッツバーグには二人称複数として yinz という形があると言い、クラスの学生たちもほとんどが知っているようでした。

私は yinz を使って話しているのは聞いたことがなく調べてみると、次のように俗語として載っていました。

Yinz is a Pittsburgh equivalent to y’all. It is used to address two or more people as a second-person plural pronoun.

(yinz は、ピッツバーグでの y'all に当たるもの。 二人称複数代名詞として二人またはそれ以上の人に呼びかけるために用いられる。)

こんな語があったのですね。 以前にもペンシルベニアで何年か住んだことのある夫も知っていました。

私もペンシルベニアに来て一年過ぎましたが、まだまだ知らないことばかりです。

yinz という語はどこから来たのでしょう。

17世紀に Scottish-Irish (スコットランド系アイルランド人) がペンシルベニア西部に移住し、二人称複数形として you ones を使っていたようです。

you ones が you-uns のような発音となり yinz となって、現在でも使う人がいるということですね。

ただ二人称複数の標準語 you を使うのが普通で、Are yinz going out to eat tonight ? のように言う人がどのぐらいいるのかも分からないので、その土地以外の人は使わない方がいいかもしれませんね。


ふたつの punch

私が住んでいるアメリカ東部では、サッカーワールドカップがちょうどいい時間帯にライブで見れるのでついつい見てしまいます。

日本は本当に本当によくがんばりましたね。 最後は残念でしたけど、いい試合を何度も見れて感動しました。

サッカーも楽しく見ていますが、解説者の言葉の使い方にもつい反応してしまいます。

アメリカが負けた試合では、ハーフタイム前のオーストラリアのゴールに対して、punch が次のように使われていたように思います。

This is a punch to the gut for the U.S.
(これはアメリカにとって大きな打撃だ。)

punch in the gut とも言えるようで、in だったのか to だったのか思い出せませんが、どちらも使えるようで、意味は次のように載っています。

A powerful blow. A physical hit to the stomach. Typically, refers to an emotional or financial hit that would afford the same effect as a blow to the torso.

(強烈な一撃。 お腹への一撃。 通常は感情的または金銭的な打撃で、胴体を殴打されるのと同じ影響を与えるようなもの。)

また次のように gut punch も同じように使えるようです。

That goal at end of 1st half is absolute gut punch for U.S.
(前半の最後のゴールはアメリカにとって完全な打撃だ。)

punch to/in the gut, gut punch は、お腹を強打されるのと同じような精神的ショックという感じですね。

また、punch という語を使って次のように言うのもよく聞きます。

Croatia punched their ticket to the quarterfinals.
(クロアチアは準々決勝に進んだ。)

punch one's ticket は文字通り、「パンチでチケットに穴を開ける」 という意味がありますが、スポーツにおいて次のような意味でも使われます。

ensure one's progress to a further contest or tournament.
(先のコンテストやトーナメントへ進むことを確かなものとする。) 

proceed、advance (前へ進む) ということですね。

入場券にパンチで穴を開けてもらって入場できるようなイメージしやすい表現ですね。

同じ punch でも精神的な打撃とは大違いですね。

Which teams will punch their ticket to the semifinals ?
(どのチームが準決勝に進むのでしょうか。)


convincing の使い方

サッカーワールドカップを見ていると、解説者が convincing という語を次のように使っていました。

~ did not have a convincing performance.
(~は圧倒的に強いと言えるパーフォーマンスではなかった。)

また、オンライン記事の中にも次のような文がありました。

Lionel Scaloni's team won with a convincing performance against the Socceroos.

(リオネル スカロニのチームはオーストラリアチームに対して圧倒的なパーフォーマンスで勝利した。)

オーストラリアチームのニックネームは soccer + kangaroo = Succeroo (s) でかわいいですね。

convincing は、「説得力のある、人を納得させる、納得のいく」 のような意味がありますが、 次のような定義も載っています。

Showing clearly the excellence or superiority of a competitor
(スポーツ競技などの選手が優れていること、優越さを明らかに示すこと)

「チームや選手などの勝利が圧倒的な」 ということです。

今日のフランスとポーランドの試合でも、次のように言えるように思います。

France won a convincing victory.
(フランスは圧倒的な勝利を勝ち取った。)

convincing はラテン語 con =with + vincere = conquer (征服する、勝つ) という成り立ちの語で、納得させるという意味になり、圧倒的な強さということになるのですね。

言われてみれば理解しやすいのですが、なかなか自分では思いつかない使い方だなあと思いました。


shy の用法

アメリカの感謝祭では七面鳥のローストにデザートはパンプキンパイというのが定番で、この時期には私もパンプキンパイを焼いています。

いろいろなレシピを読んでいると、次のような文章がありました。

Some people shy away from making pie crusts.
Here is a recipe to banish all fear.

(パイ生地を作ることにしり込みする人もいます。 
その心配を払いのけるためのレシピがここにあります。)

確かにサクッとしたパイ生地を作るのは簡単ではなく、私もあきらめて冷凍の生地を買ったこともあります。

shy というと 「内気な、恥ずかしがりやの」 という意味が浮かびますが、このように動詞でも使えます。

shy away from の意味は次の通りです。

to avoid doing or dealing with something because you are not confident enough or you are worried or nervous about it
(自信がなかったり心配したり緊張するために、何かをすることや何かに取り組むことを避けること)

あまりうまくできないし、できればやりたくないということがありますね。 そういう時に使える表現ですね。

また次のような例文も載っていました。

They shied away from the deal because they did not trust the salesman.
(彼らはセールスマンを信用できなかったので、その取引から手を引いた。)

shy away from は 「~するのを避ける、しり込みする、引き下がる」 などの訳が載っています。

心配で何かをすることを嫌がるという感じですね。

もう一つ、よく耳にするのは、「足りない、不足している」 という意味の shy で次のように使われます。

We're only $50 shy of the total amount.
(総額から50ドルだけ足らない。)

He's two credits shy of his bachelor's degree.
(彼は学士号に2単位不足している。)

この shy は short (不足している)と置き換えられますね。 元々はギャンブルの場面で使われていたようで、スラング的な使い方なのかもしれません。

また、食事の際などに、ホストが次のように言うこともあります。

Don't be shy. Have some more.
(遠慮しないで。もっと食べて。)

shy = 恥ずかしい とまず覚えますが、そこから少しずついろいろな用法を学んでいければいいですね。 私もあれっと気になったら辞書を引いて確かめるようにしています。


circumlocution

私が通っているスペイン語のクラスで circumlocution の練習をしました。

circumlocution の定義は次のように載っています。

an indirect way of expressing something
(物事を表現する間接的な / 遠回しな方法)

the use of unnecessarily wordy language, especially in being vague or evasive
(不必要に言葉数が多い言葉遣いで、とりわけ曖昧、回りくどいもの)

Politicians are experts in circumlocution.
(政治家は遠回しな表現の専門家だ。)  のように使えます。

このように見ていると circumlocution というのはあまり良いイメージがないように思いますが、外国語を学習するためには良い方法だと思います。

例えば、「郵便局」 という言葉を知らなかったら、手紙を出したり切手を買ったりする場所と言えば、相手は分かってくれますね。

私も単語を知らなかったり度忘れした時などには、circumlocution で相手に単語を教えてもらうことがよくあります。

丸い、赤い、おいしい→りんご というようなクイズ番組もあったように思いますが、そういう感じです。

スペイン語で circumlocution の練習をした後、外に出ると、大学のミュージアムの建物の前に circa 1937 (正確な年代は覚えていません。) と書いてあるのに気づきました。

circa は、ラテン語で approximately (約、およそ) という意味で、年代と一緒に使われることが多く、大体そのぐらいの年に建てられたということですね。

circa は、circum の別の形でどちらも around, round about (ぐるりと回って) という意味の語で、circle (円) や circus (サーカス) という語もここから来ています。

around 5 o'clock (5時ごろ) という言い方もありますね。

circus は、古代ローマで使われていた円形の競技場という意味から現在のサーカスという意味へ広がったようです。

circumlocution は roundabout expression (遠回し表現) とも言い、やはり遠回り、回りくどいという round という意味が生きていますね。

locution は、speak という意味の語で、言い回し、言葉遣いということですね。

自分が知っている語彙を使って話していると、相手がよりふさわしい語彙を使っていたり、教えてくれたりすることがあります。

英語でもスペイン語でも何語でも、言いたいことを手持ちの語彙で言えるように練習するのも必要なことですね。 そして circumlocution を使って、相手から知らなかった語彙を引き出すことができると勉強になり楽しいものです。


ご参考まで → 回りくどい言い方をする
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プロフィール

Author:Yurikoyama
アメリカ人の夫と息子と三人家族です。高校ではバージニア州のハイスクールで交換留学生として1年間過ごし、その後日本の大学でフランス語を学びました。
いろいろな言語に興味があり、現在はスペイン語もぼちぼち学習しています。

アメリカのニューメキシコ州、テキサス州で12年、香港で6年、そして2018年から約3年大阪で住み、2021年12月にアメリカのペンシルベニア州に引っ越してきました。
息子はニューヨーク州にある大学で寮生活をしており、これからリタイアした夫と二人の生活です。。。

日常、気になった言葉や表現について書いています。
よろしくお願いいたします。

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