前回、アメリカに住んでいた時に息子が通っていたハイスクールの卒業式について書きました。
その学校から、卒業式の注意事項について、間違って送られてきたメールの中に、次のような文がありました。
Students need to arrive and be seated fully dressed in their graduation regalia no later than 6:30 p.m.
(生徒は、午後6時30分までに到着し、きちんと卒業式の式服を着て着席している必要があります。)
卒業式には、cap and gown (卒業式用の角帽とガウン) を身に着けますが、それらを graduation regalia のように表現するのは知りませんでした。
regalia は、regal (王の)と似ていますね。
ついでに、legal は、「法律の、合法の」 という意味ですね。
regalia は、「王位の象徴、王や王族の権力」 という意味があります。
crown (王冠)や tiara (ティアラ) など、王族が身に着けるものということですね。
そして、次のような定義も載っています。
special clothes and decorations, especially those used at official ceremonies
(特に正式な儀式に使われるような特別の式服や装飾品)
卒業式の式服には、cap に付ける tassel (飾り房)も含まれるでしょうね。
cap、gown、tassel は、スクールカラーであることが多く、また成績優秀者は tassel の色が違うことがあります。
卒業証書を受け取り、卒業式の終わりには、生徒たちが一斉に、右側に付けていた tassel を左に移動させて、卒業したことを実感するようです。
ところで、regalia は、ラテン語由来の語で、形は複数形のようで、単数形は regalis となりますが、常に regalia という複数形の形で使われるようです。
また、日本の 「三種の神器」 は、Imperial Regalia of Japan と表現されるようです。
regalia は、王位や地位を示す象徴で、華やかな美しいイメージの言葉ですね。
子供の学園祭のバザーのために、髪飾りを作ることにした友人と話していた時に、scrunchie という言葉を知りました。
scrunchie とは、ドーナツ状にした薄い布に、ゴムを通して縮ませた髪飾りで、日本では、「シュシュ」 と言うそうですね。
私も髪を長くしていたころは、これを使っていたこともありますが、その名前を、scrunchie / シュシュ と言うことは知りませんでした。
フランス語で、chou (シュゥ)は、「キャベツ」 ですが、mon chou という呼びかけで、「かわいい人」 という意味になったり、chouchou は、髪飾りという意味以外に、「お気に入り」 という意味もあるようです。
scrunchie は、scrunchy とも書くようです。
scrunchie / scrunchy という語を見ていると、crunch が基になっているようですね。
crunch an apple なら、りんごを、ぱりっとかむ感じです。氷やあめなどをがりがりかむのも crunch が使えますね。
そして、scrunch は、intensive form of crunch ( crunch の強意形 )ということのようで、crunch の意味も含まれますが、「~をしわくちゃにする、~を押しつぶす、~を絞り出す」 という意味もあるようです。
なので、scrunchie / scrunchy は、ゴムを通して、布をしわくちゃにして作った髪飾りということになりますね。
scrunchie / scrunchy の特許を取った人のペットの名前 Scunci から自然と scrunchie / scrunchy となったのも理解しやすいです。
日本では、フランス語 chouchou の方を取り入れたようですね。
凹凸感のあるサッカー生地の服は、夏には涼しいけれど、あまり見かけなくなったと、夫と話していたのですが、私の悪い発音のせいで、ちょっと話が混線してしまいました。
サッカー生地は、sucker だと思っていて、sucker material shirt のように、私が言ったもので、夫は、スポーツのサッカーの soccer shirt だと思い、息子が持っている日本のサッカーチームのシャツの話をし始めたので、待ったをかけました。
夫がサッカー生地を知らないのかと思い、smooth ではないなどと布地の説明をしていると、それなら、seersucker だと言い、私は、そう言われてみれば、そう聞いたことがあったように思い出しました。
seersucker の sucker (sʌ'kər)と soccer (sɑ'kər)は、発音が似ていますが、違いますね。
私は、発音もあやふやで、単語自体も間違えていたわけで、通じないのも当たり前です。
考えてみれば、seersucker という名前も不思議な感じがして、調べてみました。
sucker と聞いて、まず私が思うのは、「棒がついた飴」 なのですが、suck は、「吸う、あめなどをなめる」 という意味がありますね。
アメリカ人がよく使う suck it up (仕方がないから我慢する、困難なこと、嫌なことに愚痴を言わない)という慣用句もあります。
いつまでも泣いて、あきらめの悪い子供などに、親がこのように言うことがあります。 苦しくても我慢して対処するという感じです。
と、また横道にそれましたが、seersucker の語源を見ると、ヒンディー語 sirsakar から来ており、ペルシャ語やサンスクリット語へと遡るようです。
そして、seersucker は、なんと、milk and sugar という意味だそうです。
seersucker の sucker の語源とされるサンスクリット語の sarkara は、gravel (砂利)、grit (固い粒、トウモロコシの粗びき)、sugar (砂糖)という意味だそうで、ざらっとしたイメージの言葉ですね。
なので、さらっとしてなめらかなミルクとざらっとした砂糖ということで、あのような生地の名前になったようです。
あまりすっきりしないような感じもしますが、sucker が砂糖なら、棒がついた飴という意味があるのも関連するのでしょうか。
seersucker は、暑い気候のイギリス領インドの時代に人気があったようです。
ついでに、Madras というとインドの都市名ですが、madras cotton のように生地としても使われるようです。
暑いインドから、このような生地の言葉が生まれるのは納得できますね。
インターネットのニュースを見ていると、次のような見出しがありました。
Vietnamese model's skimpy dress at Cannes film fest may result in fine
(カンヌ映画祭で、ベトナム人モデルが着ていた露出度の高いドレスは、罰金につながる可能性がある。)
そのドレスを着たモデルの写真も記事の中にありましたが、確かに品がよいものではなく、不快な感じがするものでした。
skimpy という語は、ものの量が「不十分な、けちけちした、貧弱な」 という意味で、普段よく耳にする単語です。
例えば、レストランで注文したデザートが出てきたときに、思ったよりも量が少なくて、「これだけ?」と思うこともありますね。
そういうときに、一緒にいる友達に、It's skimpy, isn't it? (ちょっと少ないよね。)と言うこともできます。
でも、アメリカでは、skimpy な量が出てくることはあまりなく、とても generous (たくさんの、気前のよい)量であることがほとんどです。
では、skimpy な服は、どういう意味になるのかというと、「小さ過ぎる」 という意味もありますが、この記事の見出しのように、「肌を露出し過ぎる、露出度が高い、大胆な」 という意味としても使われるようです。
露出している肌は、十分なのですが、肌を覆っているドレスの部分が skimpy (不十分)ということなのでしょうね。
ドレスを着ている本人は、skimpy というよりは、showy (人目をひく、印象的な)ドレスだと思って着ているのかもしれませんが、やっぱり程度が問題ですね。
アメリカの高校では、卒業の前に、prom (プロム)というダンスパーティがあり、通常男子はスーツ、女子はロングドレスを着て参加します。
そこで、服につけたり、腕に巻いたりする花飾りのことを、corsage (コサージュ)と言いますが、日本語にもなっていますね。
私は、男性にも女性にもコサージュという言葉を使うと思っていたのですが、男性の胸につけるものは、boutonniere と言うそうですね。 フランス語の発音は、ブートニエールですが、英語では、ブートニアのように発音しています。
corsage も boutonniere もフランス語ですが、英語とフランス語で意味のずれがあります。
corsage は、フランス語では、「ブラウス、胴衣」 などという意味で、花飾りという意味はなく、同じくフランス語の boutonnière も、「ボタンホール」 という意味で、花飾りという意味はありません。
corsage は、胴衣という意味が、女性の胸元につける花飾りとなり、boutonnière は、ボタンホールという意味が、男性のジャケットのボタンホールにさし込んだり、ピンで留める花飾りとなりました。
ボタンホールにさし込む花飾りと言うのを省略して、ボタンホールという言葉だけになったのでしょうね。
外国語が他の言語の中に取り入れられるときに、原語の意味から少しずれてしまうことはあるのでしょうね。