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pain と suffering

息子の学校主催のクロスカントリーレースが、近くの大きな公園であり、見に行ってきました。
韓国や横浜のインタナショナルスクールの生徒たちを相手に、息子も参加しました。

そのレースの案内冊子の裏に、ランニングイベントにぴったりな、次のような言葉を見つけました。

Pain is inevitable. Suffering is optional.
(痛みは避けがたいが、苦しみは、オプショナル(こちら次第))

これは、2007年に発行された村上春樹の著書、「走ることについて語るときに僕の語ること」の中の言葉で、どこかで聞いたことがあるかもしれませんね。

私は、今まで、村上春樹の本をあまり読んでおらず、彼がランナーだということも知らなかったのですが、この言葉を見て、読んでみたいと思いました。

pain も suffering もどちらも同じような意味で、辞書には、「苦痛」のような訳が載っていますが、この上記の言葉の中で、うまく使い分けられていますね。

長距離を走ると、苦しくなるのは仕方のないことですが、それが、pain で表されています。

そして、その pain を、苦しいと思うことが、suffering ですね。 

苦痛を苦痛と受け止めるかどうかは、自分次第ということで、なかなか考えさせられますね。

suffering は、sub- = below(下へ) + ferre = bear(耐える)という成り立ちで、何かが人を下へ押しつけるようなイメージで、そこから耐え苦しむということになるのかなあと思います。

pain に押されて苦しむのが、suffering ですが、その pain を、将来の自分にとってポジティブなものだという姿勢でのぞむオプションもあるというわけですね。

これは、ランニングだけではなく、他のいろいろなことにも言えますね。 何をやってもつらいことや苦労することはあるけれど、それを前向きにとらえて進んで行ければ、すばらしいことです。

私はランナーではありませんが、よい言葉だなあと思います。


瞳孔について考える

息子が、学校の日本語の授業の課題図書を読んでいて、次のように質問してきました。

瞳(ひとみ)て目のこと?

瞳を閉じる、目を閉じる、どちらも同じように使いますね。

正確には、瞳という言葉は、次のような意味になるようです。

①目
②瞳孔(目の中心部分の小さい黒目)
③瞳孔と虹彩(瞳孔の周りの黒目)

なので、瞳というと、目全体を表す場合もあれば、黒い部分を表す場合とあるわけで、紛らわしい言葉だなあと思います。

そして、英語では、それぞれ次のようになりますね。

目→ eye
瞳孔→ pupil
虹彩→ iris

息子の質問から、また深みにはまってしまい、目の小さい黒目の pupil が、他に、「生徒」という意味があることを思い出し、どうして、瞳孔と生徒が同じスペルなんだろうと気になってしまいました。

ただ、生徒という意味では、私が暮らしていたアメリカでは、ほとんど pupil は使われず、student と言うことが多かったです。

pupil の語源は、ラテン語の pupus = little boy / pupa = little girl で、小さい子供ということのようです。 それが、「弟子、教え子、生徒」のような意味になるのでしょう。

そして相手の瞳孔に映る小さいお人形のような子供の像が、pupil なのですね。

瞳孔というのは、瞳孔の中に映る小さい子供の像ということなんですね。 こんな風につながっていくと、うれしくなってしまいます。。

さらに、「瞳 = ひとみ」という言葉の語源には、「人見」という説があり、これも、相手の瞳の中に映る人の姿だと考えることができるようです。

英語と日本語のような全然違う言語の中で、このような同じような語源を持つ言葉があるんですね。

言葉って、おもしろいですね。 だからやめられません。。

トランスジェンダーではない

赤ちゃんが生まれるカップルが、赤ちゃんが生まれる前に、その赤ちゃんの性別を親戚や友人たちに知らせるパーティ (gender reveal party )というものがあります。

そのパーティに出席すべきかどうかで悩んでいる人の人生相談の記事の中で、次のような文を見つけました。

.... and though I am cisgender, I have strong feelings about gender politics and equality.
(そして、私は、トランスジェンダーではなく、シスジェンダー[=心と体の性が一致している]だけれど、性差による政治問題や平等には、強い感情があります。)

cisgender とは、「生まれ持った性別と心の性が一致しており、その性別に従って生きる人」ということで、transgender ではないということです。

なので、大多数の人が、cisgender ということになりますが、このような単語があることは、最近まで知りませんでした。

trans- が、「越えて、横切って、通って、他の側へ」などの意味がありますが、cis-は、「on this side = こちら側の」という意味があるようです。

cis が付く単語に、他にはどんなものがあるか調べたところ、cisatlantic (cis + Atlantic) がありました。

cisatlantic は、「大西洋のこちら側」ということになりますが、これは話し手から見てこちら側ということのようです。 transatlantic は、「大西洋の向こう側、大西洋横断、大西洋の両側に関する」というような意味になります。

cisgender は、このような地理的な cis-ではなく、上記の意味で、cisgender とまとめて覚えた方がよさそうですね。

cisgender は、transgender に対して生まれた言葉で、activist (政治活動家)でもない限り、日常的に使う言葉ではないように思いますが、知識としては知っておいてもいいですね。

cisgender のような多数派に属している人は、自分が普通で normal だと思い、そうでない人は、普通ではない、abnormal だと思ってしまいがちです。

transgender ではないということが正常で、transgender が異常のように扱われないように、cisgender のような言葉が生まれるわけですね。

新しい言葉が生まれるには、いろいろな社会背景が影響しているもので、興味深く感じます。

最後に、gender reveal party というのは、親になる人が、子供が生まれることに対しての喜びを分かち合う目的で行うことなので、あまり考えすぎずに、お祝いのつもりで出席すればよいのではという回答でした。


マンネリ

日本語で、「マンネリ」という言葉は、いつも同じで単調な、代わりばえがしない、つまらないというような意味で使われますね。

このマンネリの語源を考えたことは、最近までなかったのですが、次のような文を新聞で見つけて、mannerism が、マンネリの語源なのかなと思いました。

She says I have mannerisms that remind her of both of her daughters.
(彼女は、私が、彼女の両方の娘さんを思い出させる癖があると言います。)

この文は、先日の精子ドナーの記事の中のものですが、彼女は、その精子ドナーの精子により妊娠し、娘さんがいるのですが、その娘さんと精子ドナーの男性の言動が似ているということを言おうとしている文です。

親子というのは、ちょっとしたしぐさや、話し方、歩き方など似ていることがありますね。それが、mannerism で表せます。

mannerism とは、もちろん、manner + ism で、行儀や作法という意味から生まれた言葉ですが、「言動などの無意識の癖や特徴」という意味があります。

また、「芸術、文学などの型にはまった表現方法、様式」という意味があるようで、大文字で、Mannerism というと、ヨーロッパで16世紀に起こった美術様式ということのようです。

英語の mannerism が、日本語のマンネリの語源とのことですが、意味は少しずれているようですね。

マンネリというと、否定的な意味合いがありますが、mannerism は、必ずしもそうではありませんね。

マンネリという言葉から、uneventful (決まりきった、ふつうの)のような単語も思い出しますが、地震、台風などの災害が多い中、マンネリで、ふつうに暮らせることもありがたいことだなあと感じます。


napkin math とは?

先日読んだ新聞記事の中に、ある精子ドナーの男性の話がありました。

彼は、定期的に精子を売っていたようですが、あるとき、その精子を使って女性が妊娠した場合、何人の子供が生まれた可能性があるのか計算してみたようで、次のような文がありました。

I did some napkin math based on the number of samples I provided and the odds of conception and estimated that I may have as many as 67 children.

(私は、自分が提供したサンプルの数をもとに妊娠の可能性をざっと計算してみたが、67人もの子供がいるかもしれないと推定した。)

napkin math は、「おおまかに、ざっと計算する」という意味のようです。
ナプキンの裏に、間に合わせで、ざっと書くようなイメージですね。

同じような表現で、ナプキンの裏ではなく、封筒の裏という場合もあります。

back-of-the envelope calculation という表現が、ウィキペディアに載っていました。

使用済みの封筒の空欄に、急ぎのときなどに、メモすることがありますね。 そんな風に早くさっと計算するという感じです。

それにしても、この napkin math で計算したように、もし67人の子供が生まれていたとしたら、どんな気持ちになるのでしょう。

この記事によると、彼は、何人かの子供と連絡がとれて、よい関係を持っており、一人の母親とも交際が続いているようで、このことを、backward-formed relationship と表現されていました。

まず男女の出会いがあり、それから結婚し子供が生まれるという通常の形ではなく、できちゃった婚でもなく、子供の存在から、はじまった関係ということで、backward ですね。

こんな幸せもあるのかと、興味深い記事でした。


スカートだけではない skirt

skirt と言えば、まず女性の「スカート」を思い浮かべますが、これが動詞で使われるのも、時々見聞きします。

先日の新聞の見出しでは、次のように使われていました。

India's Supreme Court is taking on the topics that politicians skirt.
(インドの最高裁判所は、政治家が避けている論題に取り組んでいる。)

このように、skirt には、「(問題などを)避けて通る、回避する」という意味があります。

「スカート」と「避けて通る」ことに、どんなつながりがあるのでしょう。

skirt は、shirt (シャツ)とスペルも似ていますが、意味的にも関連があるようです。

語源を調べてみると、skirt は、もともとは、長い shirt を意味していたようで、その「すそ」 = border、edge (端)の部分ということのようです。

I live on the outskirts of Osaka city.
(私は、大阪市の周辺部に住んでいる。)  のような表現もありますが、outskirts というのは、「中心から離れた地域、郊外、町はずれ」という意味です。

skirt に「端」という意味があるからですね。

スカートのすそをぐるぐる回っているようなイメージで、物事の大事な中心部分へ近づこうとしないということになり、「(問題などを)避けて通る」ということになるのかなあと、勝手に想像しています。


squeegee は、スクィージー?

シャワーをした後に、お風呂場の壁や鏡に水滴が残りますが、この水滴を拭うための掃除用具がないことに気づき買いに行きました。

お風呂場以外にも、窓を掃除するのにも使われる、先がゴムでできたワイパーのような掃除用具で、その画像は→こちらです。

これを買いに行ったのですが、すぐに見つからず、この掃除用具を、日本語で何と呼ぶのか分からず、店員さんに説明して売っている場所を教えてもらいました。

この掃除用具のことは、英語では、squeegee と言うようです。 辞書には、スクィージーと、カタカナで載っていましたが、実際に日本人が知っていて使っている言葉なのかどうかは、よく分かりません。

squeegee は、窓を拭くときのキューキューという音から生まれた言葉のようですが、英語では、その音が、スクィースクィーという感じなのでしょうね。

もともとは、もう少し柄の長い squeegee で、船員が船のデッキを掃除する道具として使われていたようです。

そう言えば、squeak という単語も、ベッドなどが、キューキューときしむような音などを表す擬音語ですね。

そして、squeegee と似たスペルの squeeze 「絞る、強く押す」という単語がありますが、squeegee のもとになった言葉のようです。

水分を squeeze するのが、squeegee ということですね。 z と g を間違えないように使い分けたいですね。

我が家では、お風呂場のカビ予防に、この squeegee が、活躍しています。。


お知らせ
プロフィール

Author:Yurikoyama
アメリカ人の夫と息子と三人家族です。高校ではバージニア州のハイスクールで交換留学生として1年間過ごし、その後日本の大学でフランス語を学びました。
いろいろな言語に興味があり、現在はスペイン語もぼちぼち学習しています。

アメリカのニューメキシコ州、テキサス州で12年、香港で6年、そして2018年から約3年大阪で住み、2021年12月にアメリカのペンシルベニア州に引っ越してきました。
息子はニューヨーク州にある大学で寮生活をしており、これからリタイアした夫と二人の生活です。。。

日常、気になった言葉や表現について書いています。
よろしくお願いいたします。

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