クリックと言うと、まず思い出すのが、コンピュータのマウスをクリックすることかもしれません。
click は、「カチッと音がする」 ことで、シートベルトを締めるときにする音のようなものです。
この click という言葉を、夫や息子が、たまに使っていて、その使い方がおもしろいなあと思いました。
例えば、しばらく考えていた難しい数学の問題を、あるとき、あぁそういうことだったのかと理解できたときなどに、次のように言います。
That problem finally clicked.
(やっとあの問題が分かった。)
また、次のように、も使えます。
It clicked that he was lying.
(彼はうそを言っていると、ピンときた。)
click には、「突然分かる、ピンとくる、物事のつじつまが合う」 のような意味があります。
また、「意気投合する」 という意味もあり、次のようにも言えます。
She and her friend clicked right away.
(彼女と彼女の友だちは、すぐに意気投合した。)
これらは、click の比喩的な使い方で、頭の中や、気持ちの上で、カチッと音がするということが、理解できたり、ウマが合ったりするというわけですね。
それなら、日本語の 「ピンとくる」 のピンも音なのだろうかと気になります。
糸をピンと張るのように、実際には音は鳴らないけれども、ある身振りや状態を音で表そうとしたものがあり、それを 「擬態語」と呼び、「ピン」は擬態語のひとつだという説明がありました。
なので、「ピンとくる」 は、直感でそれとすぐに感じとるさまを感覚的に音で表した言葉ということになるようです。
ということは、ピンも一種の音のようなものですね。
何かが分かったときに、英語では、カチッと、日本語ではピンとくるわけですね。
先日、京都へ行った時に、特急電車の補助席を利用しようとしていた乗客を見て、夫が、次のように言いました。
There are jump seats in this train.
(この電車には補助席がある。)
jump seat とは、また面白い表現だなあと思いました。
私なら、folding seat と言っていたと思います。 folding seat は、「折りたたみ席」 ということで、これも補助席の訳として使っても大丈夫です。
また、補助席を文字通りに表現した auxiliary seat でもよいようです。
auxiliary verb (助動詞) という文法用語がありますが、auxiliary は、「補助の」 という意味です。
jump seat の方が簡単でいいですが、どうして jump なのでしょう。
調べると、アメリカの歴史に遡ります。
1860年代、まだ馬車を使って移動していたころ、後部の使用人の座る席が、jump seat だったようです。
使用人の主人が馬車から乗り降りするたびに、使用人は jump up (立ち上がって) して、主人の乗り降りの補助をしたり、荷物を運んだりしていたようです。
その後、奴隷制度も廃止され、馬車も自動車に代わり、自動車も中流階級に普及して、補助席は、使用人の座る席ではなくなり、子供が座ったり、単なる余分のスペースとなりました。
今では、飛行機のフライトアテンダントが座ったり、電車やバスなどで見かける補助席ですが、英語の jump seat という言葉には、ちょっとした歴史が隠れているのですね。
前回の記事で、ターミナルについて書いたときに、興味深いコメントをいただきました。
メモリアルという言葉が、日本では、「追悼」という意味よりも、「記念」という意味で使われることが多いのではないかというものでした。
Memorial と言えば、アメリカには、Lincoln Memorial (リンカーン記念堂)や Memorial Day (戦没将兵追悼記念日) という祝日もあり、「追悼」 という意味で使われることが多いようですね。
広島平和記念資料館も、Hiroshima Peace Memorial Museum です。
また、万博記念公園は、Expo '70 Commemorative Park となっています。
Commemorative というのが、「記念」 に近いように思います。 特別な行事や歴史的な出来事などを記念するのに使われる場合が多いようです。
でも、Elvis Presley commemorative stamps (エルビスプレスリーの記念切手)のようにも使えますし、亡くなった人の記念としても使えるようですね。
もうひとつ、前から気になっていた anniversary という言葉ですが、wedding anniversary は、「結婚記念日」のことで、 アメリカ同時多発テロ事件の追悼式典のことも、9 / 11 anniversary と、anniversary と言うのがちょっと違和感を感じていました。
anniversary は、結婚記念日のような幸せな出来事に使う言葉だと勘違いしていましたが、そうでもないようです。
annus というのが「一年」のことなので、一年に一度行うことであれば、anniversary なのでしょうね。
ということは、one month anniversary というのは、本来はおかしいことになりますね。
そして、9 / 11 Memorial Museum もあります。
memorial、commemorative、anniversary は、どれにも 「記念」 と訳すことはできますが、少しずつニュアンスが異なる言葉ですね。
先日、京都の宇治へ行ったのですが、宇治駅に着いたときに、電車のアナウンスの中で、Uji terminal という言い方が耳に入りました。
terminal は、「終点」 に当たり、train station at the end of the line (路線の終着駅) ということですね。 バスも同じですね。
We got off at the terminal.
(私たちは、終着駅で降りた。) のように言えます。
(誤)terminal station などと言ってしまいがちですが、terminal という単語に「駅」も含まれるということですね。
terminal というと、思い出すことがあります。
15年ぐらい前に、大阪の梅田に、Terminal hotel という名前のホテルがありました。
そのホテルの前を夫の母と一緒に歩いたときに、Terminal hotel というのは、あまりよい名前だと思わないと言ったのを覚えています。泊まったら出られないみたいと言っていました。
そう言われて考えてみて、terminal cancer (末期がん)、He is terminally ill. (彼の病気は、末期的だ。)のように使うことを思い出しました。
terminal には、「病気などが末期的な、死にいたる」という意味があります。
Terminal hotel は、ターミナルにあるホテルという意味で名づけられたのでしょうが、夫の母のような想像をしてしまう人もいるのなら、確かにあまり泊まりたいとは思いませんね。
それからしばらくして、ホテルの名前はグランヴィアに変わり、よかったなあと思いました。
それにしても、電車の終着駅を表す言葉が、命の最後までも表せるわけですね。
いろいろな終わりがあるものです。
先日のオンライン記事の中に、annoying slang terms (うっとうしい俗語)のリストがあり、知っているものもありましたが、聞いたこともないような言葉もあり、その中に、Gucci がありました。
Gucci と言えば、もちろん、イタリアの高級ブランドのグッチですね。
これが、俗語では、形容詞として次のような意味で、オンラインのウェブスターの辞書にも載っています。
Gucci is used as an adjective generally to mean "fancy, very fashionable"; "good, fine"; "great, excellent."
(グッチは、形容詞として、一般に 「高級な、とてもおしゃれな」、「よい、すてきな」、「すばらしい、優れた」 という意味として使われる。)
どのように使うのかというと、何かすてきなものを見たときなどに、That's so Gucci. (とてもすてきだね。) のように言うそうです。
私はこのような使い方を聞いたことがなかったので、息子に Gucci の意味を知っているか聞いてみると、学校で使っているのを聞いたことがあると言います。
でも、息子は、自分では使うことはなく、使いたいとも思わないようで、使っている人は限られているのかもしれません。
そこで、高級なファッションブランドなら、他にもシャネルなどもありますが、どうして Gucci なのかと思い、音が good に似ているからかなと思って調べていると、音との関連もないこともないようです。
このような俗語は、特に、うっとうしいリストにも入っていることですし、使う必要は全くなく、ちょっとしたご参考程度ということでよいようですね。
前回、crisp について書きましたが、お酒についても crisp が使えるようです。
お酒の味について、「キレがある」 という表現がありますが、これを英語で言うと、さまざまな言い方があるかと思いますが、crisp taste のようにも言えると思います。
crisp には、fresh (新鮮な)、refreshing (すっきりさせる)、firm (引き締まった) などの意味があり、キレとは、辞書に、「さらっとして後に残らない口あたり」 と載っています。
先日、友人家族と食事をした際に、二種類のお酒があり、一つ目は、コクのあるタイプで、二つ目がキレのあるタイプで、私はお酒を飲まないのですが、夫や友人の話を聞いていて、コクとキレについて考えてみました。
キレは、上記のように、crisp や light、sharp などとも言えるかもしれません。
そして、コクは、辞書に、「濃厚な深みのあるうまみ」 と載っています。 コクは、①漢語の「酷」から、②形容詞「濃い」の連用形が名詞化したものからという説があるようです。
「酷」は、「きびしい、程度がひどい」 という意味で使われますが、「穀物が熟すること」 を表した漢字のようで、程度がひどいというのも、酒のアルコール度が強い、酒の香りが強いということのようです。 よく見ると、「酒」にも、「酷」 にも 「酉」 が含まれていますね。 「酉」には、「果実が成熟の極限に達している」 という意味があるようです。
英語では、body という言葉が、コクに当たり、full-bodied (コクがある)と言うのをよく聞きます。
full-bodied に対して、medium-bodied、light-bodied という表現もあるようです。
full-bodied と同様に、rich、robust などもよく使われます。
full-bodied というと、ちょっと抽象的ですが、body を flavor と置き換えて、flavor や richness が、full だと考えれば、分かりやすいかなと思います。
コクがある(濃厚な深みがある)→full-bodied → フレーバーが豊か というところでしょうか。
とはいえ、「コクがあるのにキレがある」のような宣伝文句もあり、こうなると、もうどんな味なのか想像できません。。